「商品が売れていない・・・
マーケティングをイチから考え直したいと思っているのですが、
どのようなステップを踏めばよいのでしょうか?」
「自社商品のパッケージを変えたいと思っているのですが、
デザイナーにはどのような情報を提供したら良いのでしょうか?」
というあなた向けに、記事『マーケティングのお仕事~デザインに頼る一歩手前の話~』で
デザインに着手する前のマーケティングの7ステップについて紹介しました。
【デザインに着手する前のマーケティングの7ステップ】
(1)ターゲット顧客選定のための顧客分析
(2)ターゲット顧客のペルソナの作成
(3)お客様ニーズの整理
(4)自社シーズ(強み)の整理
(5)ブランドパーソナリティの策定
(6)ブランドストーリーの作成
(7)デザインの作成(広告デザインや商品パッケージへの落とし込み)
本記事では、「(6)ブランドストーリーの作成」について解説したいと思います。
ブランドストーリーはマーケティング活動の起点となりますので、必ず作成しましょう!
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本記事は、「マーケティングのお仕事~デザインに頼る一歩手前の話~」シリーズの一部です。
マーケティングについて気になる記事から読んでみてください。
>>デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~法人の顧客分析~
>>デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~個人の顧客分析~
>>デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~ペルソナの作成~
>>デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~お客様ニーズの整理~
>>デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~シーズの整理~
>>デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~ブランドパーソナリティの策定~
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記事の信頼性
・リクルート時代に新規事業開発(主にマーケティング調査)を担当していました。
※詳しくは“プロフィール”を参照ください。
・“本業”では現役バリバリで商品のマーケティングに携わっています。
・自分自身でも副業でビジネス(株式投資の個別セミナー)を展開しており、本業の2.7倍の収益を得ています。
ブランドストーリーとは?
ブランドストーリーとは、これまで整理してきたお客様ニーズや自社シーズを100文字程度にまとめた文章です。
ブランドストーリーを中心に全てのマーケティング活動を進めていきます。
商品/サービスをアピールする販促物(パンフレット、チラシ、ポップなど)や、ECサイト(トップページ、商品/サービスの説明ページ)などは、ブランドストーリーに沿ったデザインにするべきです。
ブランドストーリーに沿ったマーケティング活動には“一貫性”が生まれ、“一貫性”が生まれるとお客様に対する商品/サービスの訴求力があがります。
「〇〇といえば、△△(自社の商品/サービス)だよね」
とお客様の頭の中でイメージが湧くようになると、競合他社の商品/サービスとそこまで比較されることなく、自社の商品/サービスをお客様に選んでいただけるようになります。
あえてブランディングではなくマーケティングという言葉を使っている理由
お客様の頭の中のイメージにまで話を展開すると・・・
「マーケティングというよりブランディングですよね?」
という疑問を抱く方も多いと思います。
はい。
本ブログで紹介している「デザインに着手する前のマーケティングの7ステップ」では、ブランディングにまで踏み込んだ話をしています。
僕があえて“ブランディング”という言葉ではなく“マーケティング”という言葉は使っているのには理由あります。
ブランディングには“自社シーズ”から考えるプロセスが多くみられ、“お客様ニーズ”を二の次とする風潮がみられるためです。
もちろん“自社シーズ”を起点としてターゲット顧客を選定し、ターゲット顧客から“お客様ニーズ”を整理するプロセスでブランディングを成功させている企業はあります。
ただ、ものづくり大国日本で“自社シーズ”を起点としたブランディングを進めてしまうと・・・
「俺たちの納得する商品/サービスがこれ!
品質向上のために汗水流してきました。
買ってください」
という思考に流されやすくなってしまいます。
この思考の何が危ないかというと、“俺たちの納得する商品/サービス”と“お客様の満足する商品/サービス”は必ずしもイコールになるとは限らないことです。
スマートフォンの誕生(厳密にはiPhone)の誕生がいい例ですね。
初代スマートフォンが海外から日本にきた当時、日本の企業が目指していたのは・・・
「1mgでも軽く、1mmでも薄い携帯電話の開発」
でした。
携帯電話の品質は、重さの軽量化や形の薄さに焦点が当てられていたわけです。
ところが、重さの軽量化や形の薄さなんてものはすでにお客様が求めているものからズレていました。
携帯電話の重さが1mg軽くなろうが、形が1mm薄くなろうがお客様はあまり気にしなくなっていました。
それでも日本の企業が携帯電話の重さや薄さに注力していたのは、“自社シーズ”から考えるプロセスと日本人の職人気質がマッチしすぎていたからだと思います。
なので、僕自身は“自社シーズ”から考えるプロセスが垣間見えてしまう“ブランディング”という言葉はあえて使わないようにしています。
商品/サービスは、お客様ニーズを満たせてなんぼ。
商品/サービスは、売れてなんぼ。
そうなると“お客様ニーズ”から考えるプロセスの多いマーケティングという言葉の方がしっくりきますし、今の日本人には必要な考え方だと思います。
僕があえて“ブランディング”という言葉ではなく“マーケティング”という言葉は使っている背景はそんなとこです。
商品提供価値ラダーの作成
商品提供価値ラダーとは、書籍「ブランディングの基礎」(安原智樹著)で紹介されているブランドストーリー作成前に整理するべき枠組み(フレームワーク)です。
商品提供価値ラダーで提示されている項目は以下のとおりです。
N-2(ニーズ-2):生活者にとってのベネフィット(生活全体の充実にまつわる話)
N-1(ニーズ-1):消費者にとってのベネフィット(消費者や効用にまつわる話)
S-1(シーズ-1):体感できる商品の独自性(訴求している独自性の話)
S-2(シーズ-2):独自性を支える体感できない独自性(独自性を支える志にまつわる話)
です。
これらの項目はひとつひとつが独立しているわけではなく、「なぜなら」と「だから」で結び付いています。
N-2:生活者にとってのベネフィット(生活全体の充実にまつわる話)
なぜなら↓↑だから
N-1:消費者にとってのベネフィット(消費者や効用にまつわる話)
なぜなら↓↑だから
S-1:体感できる商品の独自性(訴求している独自性の話)
なぜなら↓↑だから
S-2:独自性を支える体感できない独自性(独自性を支える志にまつわる話)
N-2、N-1は、記事「デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~お客様ニーズの整理~」で整理したお客様ニーズを参考にして記述しましょう。
S-1、S-2は、記事「デザインに頼る前のマーケティングのお仕事~シーズの整理~」で整理した自社シーズを参考にして記述しましょう。
書籍「ブランディングの基礎」(安原智樹著)では商品価値提供ラダーの事例として、「基礎化粧品『SK-Ⅱ』(P&G)」と「温泉旅館『界』(星野リゾート)」が紹介されています。
大変参考になるので、ぜひ、書籍「ブランディングの基礎」(安原智樹著)を読んでみてください。
ブランドストーリーの作成
商品提供価値ラダーの作成まで完了した後、ブランドストーリーの作成に着手します。
ブランドストーリー自体は、商品提供価値ラダーで記載した文章を100文字程度にまとめられればOKです。
ただし、以下の3つの注意事項は守りましょう。
・5年間は変わらないストーリーになっていること
・自社独自の言葉は入っていること
ひとつひとつ簡単に解説していきます。
競合他社の商品/サービスと比較しようがないこと
“競合”という言葉を使うと・・・
「勝たなきゃ!」
という思考に走り、“勝負”が前提の話になってきてしまいます。
ただ、ビジネスにおいてはする必要のない“勝負”は避けるべきです。
“勝負”には多大なるリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)が必要となり、競合に勝ったとしても(売上をあげられたとしても)、リソースにコストをかけすぎてしまう(利益が残らない)場合が多いです。
「孫氏の兵法」で・・・
(敵国を保全したまま勝利するのを最上の策とし、一番の下策は城攻めである)
※書籍「眠れなくなるほど面白い図解『孫氏の兵法』」より引用しています。
とあるように、戦わずして勝利をおさめるに越したことはないのです。
ブランドストーリーでは、「A社の商品より、〇〇に優れた△△」などという文章を入れるのはやめましょう。
A社がより優れた商品を出してきた時点でブランドストーリーを修正するという不毛な戦いを強いられることになります。
5年間は変わらないストーリーになっていること
ブランドストーリーは、長期目線で作成するようにしましょう。
マーケティングで商品/サービスがお客様に認知されるまでには長い期間が強いられます。
その長い期間でブランドストーリーがコロコロと変わってしまっては、マーケティング活動の“一貫性”を保てなくなります。
“一貫性”が保たれなくなると、お客様への商品/サービスの認知の広がりが遅れます。
最悪のケースでは・・・
「結局、この商品/サービスを取り扱っている企業は、何がしたいんだろう?」
というお客様の不信感にもつながってしまいます。
ブランドストーリーを作成する際は・・・
「5年経っても変わらないストーリーとなっているだろうか?」
という視点を大切にしてください。
自社独自の言葉は入っていること
ブランドストーリーには、自社の独自性(オリジナリティ)を含めましょう。
「他社が同じブランドストーリーを発信していたら違和感を抱くか?」
という視点が重要になります。
自社の独自性が含まれているブランドストーリーには、自社独自の言葉が含まれているケースが多いです。
経営陣や社員がよく使っている言葉の中に、自社独自の言葉が眠っています。
ぜひ、自社独自の言葉を探して、ブランドストーリーに組み込んでみてください。
さぁ、ブランドストーリーを起点に発信していこう!
ついにマーケティング活動の核となるブランドストーリーにまでたどり着きました。
ここまで来てやっと、“デザインに頼る直前”まできた感じです笑。
次回の記事では、マーケティングの7ステップの最後「(7)デザインの作成(広告デザインや商品パッケージへの落とし込み)」について解説します。
デザイナーとのやり取りで大切なことをお伝えします。
それでは~
かまくら